「蒼空くんとふ、ふ、ふたりで映画行きたい!」

 蒼空くんがびっくりした顔になった。
 だけど、私もびっくりだよ!

 亜理紗は目を潤ませながら、首を小刻みに縦に振り始めた。
 一体どうしたっていうの?
 大丈夫なのかな?

 私はハラハラするだけで、どうしていいかわからない。
 けれど、そんな私を尻目に、蒼空くんははっきりと宣言した。

「なら、計画立てて誘うよ」

 ……へっ!?
 何が起こったの?
 理解が追いつかない。

「今日は時間ないから、また学校で話そう」

 隣では、亜理紗が蒼空くんと手を振り合っている。
 いつの間にか、私ひとりが違う世界にいた。

 私もそろっと手を胸の高さまで上げてみた。
 すると、蒼空くんは私にも手を振ってくれた。
 だけど、それは明らかにクラスメイトの誰にでもくれるもので、亜理紗に対して注いでいた熱量はなかった。