試験監督をしていた先生が答案用紙を回収し、教室から出ていった。
 その途端に、あちこちから声が上がる。

「やっと終わったー」
「やっべぇ、全然分かんなかった」
「あー、疲れた」
「最後の問題、何て書いた?」

 それらの全てを打ち消すように、(あおい)ちゃんのとびきり可愛い声が響いた。

「ねえ、打ち上げ行かない?」

 クラスの一軍メンバーから、『わあ』っという歓声が沸き起こった。
 葵ちゃんは、いつだってクラスの中心にいる。
 というより、葵ちゃんのいる場所がクラスの中心になる。
 ここ星ヶ丘高校2年2組のトップ・オブ・ザ・トップなのだ。

「いいね!」
「はいはい、私も行きたーい」

 もちろん、私は蚊帳の外。
 いいんだけどね。
 だって、蚊帳の内側にいるほうが圧倒的に少数だから。
 ちっとも淋しくない。