私は自分自身に驚いた。
 本当に、自分が思っていた以上に『家族への関心』が無くなっていたのだと。

 両親が死んだというのに、ここまで感情が湧かないなんて。
 さすがにそこまでとは思っていなかった。

 しかも、むしろ嬉しいなんて。
 酷い仕打ちをされたとは言え、普通は有り得ない。
 なんて、そう思う自分は何故また第三者目線なのだろう。


 そして、武内先生の行動にも驚いた。
 妹と連絡先の交換をして、その上、私の代わりに病院に行くなんて、思ってもいなかった。

 予想外の連続。
 というか。
 私が高校生になってから、ずっと予想外の連続だ。





 翌日、いつも通り学校に向かった。
 クリスマスの翌日は終業式。

 進学校である桜川高校だけが、冬休みに入るタイミングが少しずれている。



 ……やっぱり、悲しいという感情は湧かない。

 夜に眠って、朝起きて、いつも通り学校に来たら、何かが変わるかもなんて思っていた。

 けれど、何も変化なし。
 両親が死んだこと、悲しく思えない。



「柊木さん」
「はい」
「終業式、行こう。また後ろで僕と一緒に様子を見ていたら良いから」
「……分かりました」


 差し出された武内先生の手を、そっと握り返しながら席を立つ。

 そして、優しく肩を抱き寄せてくれた先生の胸に、そっと頭を預けてみた――……。