街中を思うままに歩き回った私。
 アパートの自室に戻り、カップラーメンを食べてお風呂まで済ませた。

 時刻は21時過ぎ。
 武内先生はまだ帰って来る気配が無い。


「……」


 せっかくのクリスマス。
 両親の話は聞くし、妹弟は学校まで来るし……。

 早く帰ると言った武内先生はいつも以上に帰りが遅い。


 
 布団に潜り込み、最近お気に入りの小説を読む。
 スマホが使えなくなってから毎日続けている、私のルーティンだ。


 どのくらい時間が経ったのか分からないけれど。
 しばらく小説の世界に浸っていると、インターフォンが突然鳴り響いた。

 警戒しながらモニターを覗き込むと、そこに写る武内先生。

 あっ、と声を上げながら急いで玄関に向かい扉を開くと、すっかり疲れ切った表情をしている先生が立っていた。
 髪の毛には雪が少し乗っている。まだ外は雪が降っているみたい。


「た……武内先生……」
「……ただいま」


 少しだけ口角を上げた先生は、鞄をその場に置いて優しく私の体を抱きしめた。

 私の肩に頭を預け、ふぅ……と息を吐く先生。
 小さく体を震わしながら、小さく言葉を発する。


「病院に行っていた」
「……え?」
「2人とも、亡くなったよ」
「…………」


 その一言に心臓が大きく飛び跳ね、変な汗が流れ始めた。

 先生はそれ以上何も言わなかった。
 私自身も突然の先生の言葉に、返答が何1つ出てこなかった……。