「柊木さん、お待たせ。僕の部屋で食べよう」
「すぐ行きます」

 先生はお弁当を2つ買ってきていた。
 ハンバーグ弁当と唐揚げ弁当。このどちらも私が好きなおかずだ……なんて考えていると、「良かったら半分ずつ分けない?」と先生は提案してくれた。


 何だか心の奥を見透かされている気がして、涙がジワッと滲む。


「明日からは僕が食事を用意するから。準備ができたら食べにおいでね。お弁当も作るよ」
「そ、そんな。申し訳な――……」
「柊木さん。僕は自分の食事を作るのだから、1人分増えるくらい何てことも無いよ。むしろ一緒に食べて欲しい。1人は寂しいからさ」
「……」


 寂しいなんて嘘だ。

 これまで、どのくらいそう思ってきただろう。


 大人は私に“寂しい”という言葉を使い、私が抱く感情を取り除こうとしてくれる。それが常套手段だと、最近は確信している。


 分かっているのに。
 それでも、やっぱり単純な私。


 先生のその言葉が嬉しくて、優しくて。


 滲んでいた涙が一筋ほど零れ落ちた。