結局、結論が出ない私と武内先生。



 でも目先の問題については、どうするかはすぐに決めなければならない。

 私の生活拠点のことだ。



 そこで「費用は払う」と言ってくれた先生が、しばらくはビジネスホテルに泊まって欲しいと言い出した。というか、指示らしい。泊まりなさい、らしい。

 費用なら親からの100万円があると言うと、「それはもしもの為に置いておきなさい」と言って、半ば無理矢理に私の銀行口座へ入金させられた。
 

 何をするにも、先生は本気だった。




「柊木さん、おはよう」
「おはようございます」

 休み明けの『サクラ学級』、登校すると既に武内先生が居た。

 ビジネスホテルから学校に向かった私。
 先生の姿を見ると、妙に安心感を覚える。

「ホテルどう、問題無い?」
「全く問題無いです。先生、本当にごめんなさい。お金のこととか、迷惑ばかりかけてしまいます」
「……謝らないでよ。迷惑なんて思っていないから」

 
 先生は生徒机に座って仕事をしていた。

 日頃は職員室でやっていることを、ここでやっている理由なんて……。


「……」


 いつも先生は、私の考えを上回る。



 私は自分の席に座り、今日を過ごす準備をした。

 ここに来ると、両親に追い出されたことから、現在はホテル生活という現実まで全てが夢だったのではないか、そんな感覚がしてくるから不思議だ。


「…………」


 窓の外を眺めて、少し雲が掛かった空を見上げる。

 雨でも降るのかな。
 何だか悲しそうな空が、妙に印象的だった。