「自分らしさを奪われちゃうなんて、うちは嫌だ!」
 
 先生に負けない大声で、叫ぶ芽依先輩。

 すごい……芽依先輩。

 大人に負けないで、自分の気持ちを言えるなんて。

 学習室がシン……と静まり返る。

 「……『自分らしさ』? そんな言葉1つで、自分の気持ちを押し通すつもりか?」

 ……だから、五里先生の低い低い声が、よく聞こえた。

 「みんな『自分らしく』好き勝手に行動したら、あっという間に学校は……世界はめちゃめちゃになる。それが分からないのか?」

 先輩の気持ちは、叫びは……届いていない。

 それを確信した、そのときだ。

 「痛い!」

 先輩の悲鳴に、私はハッとして学習室をのぞき込んだ。