2人とも、私のことは気づいていない。

 また、五里先生が怒鳴った。

 「そんな派手な髪飾りをして……勉強の妨げになるだけだろう!」

 そうか。先生、芽依先輩の派手な髪飾りに怒っているのか……。

 確かに、あれは目がチカチカするほど派手だったものね……。

 ほら、3メートルくらい離れているのに、ここからでも輝きが分かる――。

 ん? あのヘアピン、どこかで見たような……。

 どこだっけ?

 「うちにとっては、おしゃれはやる気の源なの。それに、兄中は『生徒の自由と個性を尊重する』がモットーなんでしょ? なら、これくらい、いいよね?」

 「いいわけないだろ! 派手なアクセサリーは禁止だ。それに、生徒がみんな自由に行動したら、トラブルのもと。俺がいう『自由』は、『決められたルールの中で行動する自由』のことだ」

 「なにそれ。『派手』って何? そんなの、先生たちの主観じゃん!」

 先輩は、ピリピリした雰囲気をまとう先生にひるまず、反論していく。

 先輩の息を吸い込む音。一瞬の緊張。