「ありますよ。これです」

 机に置かれたのは、A5サイズのノート。よく言えばシンプル、悪く言えば地味な灰色のノートには、黒いペンで小さめに「日記」と書かれている。

 なんの変哲もない、普通のノートだ。これが、夜に泣き出す……と?

 「中見てもいい?」

 「もちろん。あ、私もう行かなきゃ。5月25日には完成させていなきゃだから、5月20日にまたここに来ます」

 「5月20日? ……って、あと2週間ちょっとしかないの⁉」

 びっくりして聞き返したけれど、そのときにはもう有栖川さんが部室にいなかった。

 すばやい……。

 「よし、中を見るよ。みんな、こっちに集まって」

 代表して蘭先輩がノートを開く。