「あのさ……」

 大神くんがつぶやいた。

 「あっ、ごめん! い、痛かった?」

 「痛かったは痛かったけど……その、さ」

 大神くんは、何度か言うのをためらった後、こう言った。

 「どいてくれない?」

 「へ?」

 そう言われて、初めて気づく。

 私は、四つん這いの状態。大神くんは私の足の間に仰向けで寝っ転がっている。

 つまり、かなり近い距離にお互いの顔があるということで。

 「ごっ、ごごごごめん!」

 パニックになった私が、どこうとした瞬間だった。

 ――カシャ

 ……え? カシャ……?

 私は、そのままの状態で音のした方を見る。

 「校内でラブシーンしてるんだ~、お2人さん。超特ダネじゃん?」

 階段の陰から、誰かが出てきた。

 持ち込み禁止のはずのスマホを掲げ、こっちをニヤニヤしながら見てくるその顔は――。

 「有栖川さん……」