あれは中学生の時だったな。 涼子からラブレターらしきメモ用紙を貰ったんだ。
その時は(こんなことも有るのか。)くらいにしか思えなかったんだけど、涼子が死んだ時に読み返してハッとしたんだ。
 『いつまでも傍に居てね。』ってことはさ、好きだったってことじゃないか。 そこまで俺は読み切れなかったんだ。
何も分かってなかったんだね。 だから涼子の死体を見た時、俺は狂ったように泣いたんだ。
 泣いたって涼子が戻ってくるわけじゃない。 そんなことは分かってるよ。
でもあの日は飽きるまで泣き続けた。 こんなに悲しいことが有るのかって思うくらいにね。

 ラブレターの返事を期待してたかどうかは分からない。 その後、涼子からは何も聞かれてないから。
だからって誰かと付き合ってるっていう噂は一度も聞いたことが無いんだよな。 もちろん、由美子も何も言ってなかった。
 中学生の涼子はどっか文学少女って雰囲気も有ったんだよね。 人気の小説をいつも持ち歩いていた。
俺は小説より漫画に嵌ってたからジャンプを毎週のように買って読んでたよ。 『北斗の拳』はすごかったなあ。
 同級生と毎日ケンシロー ラオー トキ、、、。 アチャーだのシャオーだの、ワキャーだのって吼えながら走り回ってたっけ。
そうかと思えば『タッチ』だよなあ。 南ちゃんにみんなベタ惚れしてたっけ。
 うーん、なんちゅう時代なんだ? あの頃はとにかく楽しかった。
お菓子だって特徴的なやつが多かったような、、、。 ドンパッチなんてなあ。
 浮かし餅なんてやつも売ってたよなあ。 一回しか食べたことは無いんだけど。
粉と水を入れて掻き混ぜたらジュースになるってやつも有ったっけ。 今じゃ飲まなくなったな。
 あの頃、俺はよく由美子に英語を教えていた。 教えるって程じゃないけど、、、。
夏休みなんて遊びに行くか勉強するか、、、だったよなあ。 親も勉強にはうるさかったから。
 日曜日になると家族で海へ行ったり動物園に行ったりしたもんだよ。 砂浜でバーベキューもよくやった。
親父は後片付けにうるさい人で、ごみ一つ残しても「取ってこい!」って言うんだよなあ。 取ってくるまで帰らなかった。
 それでかな、ゴミが落ちているのを見ると拾いたくなるのは、、、。

 夏はプールが真っ盛り。 学校でもね、プールの最後の日は水泳大会をやったもんだ。
でもさあ、先輩たちの水着姿を見ているとドキドキしたよなあ。 あの頃はスクール水着だったのに、、、。
 それでも本当にプールで泳げるようになったのは中学生からだった。 小学生の頃は防火用水だったんだよ。
そこに晒し子を投げ込んで消毒してから泳ぐんだ。 地下水だったから冷たくてかなわなかったなあ。
 あの頃は更衣室も無かった。 教室で着替えてから防火用水の周りに集まるんだ。
だからさ、夏の体育の時間になると女の子たちは大変だったろうなあ。 先生たちはどうしてたんだろう?
 いろんなことを思い出してしまうね。
いい感じで酔いが回ってきた。 寝るよ。