「やったああ図書カード貰えたああ!!」

 リバーシブル男子のコンテストの参加賞で図書カードをGETした水姫は、大はしゃぎですぐさま太陽の元に駆け寄った。

「ねぇねぇ太陽くん何の本欲しい!?」

 だが太陽は両手を振って謙遜した。

「えっ、俺はいいよ。この小説ほぼほぼ水姫さんが喋ってたし」

「そんなことないよ!?」

「『リバーシブル男子』ってお題なのにもはや『リバーシブル水姫さん』だったし」

「そんなこと……はあるかもしれないけど!!えっ、もしかして拗ねてる!?」

 顔を覗き込むと、太陽はしかめっ面で目を逸らした。

「……別に」

 確実に拗ねている。

「ごめん太陽くん完全一人称にすれば良かったね!?作者が三人称一元視点好きすぎるばっかりに!!しかも拙いせいでめっちゃ鬱陶しい説明的な文になってたし!!野いちごは丁寧な心情描写が要だってのにこれだから素人は!!よし分かった、私が作者の代わりに太陽くんのサイドストーリーを書き上げてみせよう!!」

 水姫は図書カードを置き、意気揚々とペンを取った。

「いや、それより水姫さんが好きな漫画とか買った方が……」

「私は太陽くんのアイスクマ漫画が読めればそれで十分だから!他に欲しい物なんて何もないよ!」

「あ、そう……」

 太陽は口に手を当てて嬉しそうに俯く。その反応が見たくて水姫は大袈裟なくらい褒めているまである。

「え、じゃあやっぱり俺が図書カード貰ってもいい?」

「勿論!何買うの?」

 すると太陽は、こそこそと図書カードをポケットに入れながら、気まずそうに口ごもった。

「……秘密」

「え?な、何?」

「だから秘密」

「ど、どういう……?」

 そこで水姫はハッと気付いた。

「あっまさか年齢制限あるような本を買うんじゃ!?」

「それは違う!!」

「じゃあ何!?」

 水姫に執拗く迫られて、太陽は蚊の鳴くような声で答えた。

「……異世界ハーレムもの、とか」

「うーん……全然良いよ!!」

 水姫は満面の笑顔で親指を立てた。 
 その純粋すぎる恥じらいが見られただけで、お金には代えられない喜びを感じる水姫なのであった。

「それ後で私にも読ませてね!」

「いや、ちょっと露出が……」

「そんなの関係ないよ!太陽くんが面白いと思うものは何でも面白いからね!」

「いやいやその理論怖いし……水姫さんちょっとキャラ変わってない……?」

「そんなこと……多分あるね!!」

★恋は人を変える──