嫌な予感というのはよく当たるもので、太陽は日に日に友達に囲まれていき、あっという間に所謂人気者ポジションに返り咲いていた。人見知りと言いつつも人当たりが良く、一度打ち解けさえすれば円滑なコミュニケーションが取れる為、素を出そうが人気になるのは必然だった。
 その分水姫と話す回数は減っていき──遂には完全に別々に昼食を取るようになってしまっていた。つまり、ほとんど繋がりが絶たれたというわけだ。
 といってもLIMEやTmitterは繋がっているし、話そうと思えばいくらでも話せる。またいつでもショッピングモールに遊びに誘える。何ならあの輪に混ざることだって──それができたらこんなに一人ぼっちでい続けることはないのだが。少心者の水姫に、一対一以外で話すなどできるはずもなかった。にぎやかな輪に混ざりたいとも思えなかった。

「太陽くん面白すぎ〜!もっと早く話せば良かった!」

「今まではなんか近寄りがたい雰囲気あったもんな。パリピ感っていうか、リア充感っていうか」

「何それ笑 俺は性格暗いし影も薄いよ。まぁでも、リア充っていうのはあながち間違いじゃないかな。皆と好きなものについて語り合えて、今、めちゃくちゃ充実してるから」

「うっわモテ発言すぎる!!」

「てか彼女いんの!?絶対いるよな!?」

「だからいないって笑 恋愛至上主義やめろよ笑」

 ──そんな心底楽しげな会話を、蚊屋の外で盗み聞きすることしかできないでいた。自分と話していた時は、果たして充実していたのだろうか。太陽のことだからきっとYesと答えてくれるに違いないが、今は聞くのが少し怖い。

 リアルが充実していくにつれて、太陽がアイスクマの二次創作イラストを上げる頻度も滞っていった。アイスクマへの興味がなくなったらもはや何もなくなってしまう気がして、強い危機感に襲われ、水姫はわざとグッズの写真を上げたりしてみた。
 一応太陽からいいねは来た。それだけじゃ物足りなくて、3000円もするぬいぐるみを通販でわざわざ買って上げたりもした。もはやぬいぐるみが心から欲しかったというより、太陽に注目してもらいたい一心だった。
 これは流石にコメントが来るだろうと確信し、ドキドキしながら眠れないまま待っていた。でも結局何も変わらず、いいねだけだった。
 プツンと何かが切れた気がした。その晩、水姫は太陽のフォローを外し、そのままふてくされるように眠りについた。