「あっ、えっと、神宮寺さん?さっき、あっちの方に行くのを見た気がするなぁ」

……は?

何言ってんだこいつ。

扉の外を指してそう言った亜衣。

俺はこん中にいるだろ?


「え〜本当に?!ありがとっ!双葉ちゃんっ!」

手を振って向こうへ行った、二人の女達。

「あの、大丈夫ですか?」

「……なぁ、なんで嘘ついたんだ。

嘘ついていいことなんて、なんもないだろ!」


俺の言葉にキョトンと首を傾げた亜衣。

「んっと、だって、今日の神宮寺さん、体調が良くなさそうだったので…。

お昼頃にいなくなって、その、来た時から、体調悪そうだったから、絡まれるの辛いかなぁ、って思って。」

コイツ……。

自分のためじゃなく、人の為に?

「あっ!図書室に私が来たのはたまたまですっ!よくここで勉強してて!」

俺が黙ったのを見て、何やら勘違いした亜衣が、ひたすら訂正していた。

その姿が面白くて、ぷっと吹き出してしまう。

それに釣られてか、ふふっと亜衣も笑顔を俺に向けてきた。

っ……!

この笑顔で、俺は確実にもっと惹かれていっていた。