しばらく経つと、後宮の力関係が生まれ、派閥ができてきた。人間って集団になるとこうなるのよねぇとしみじみ思う。
「お嬢様は呑気すぎませんか?大丈夫ですか?」
「私は無所属無派閥でいたいわ。関わりたくないわ。でもそれって目をつけられやすいのよね」
私は嫌がらせされると対応するのがめんどくさいしという理由で、策を練ることにした。
……うん。とりあえず最大派閥の人に私は無害ですからとアピールしておこう。最適なのは、後宮で一番勢いのあるワイアット公爵令嬢ね。
お父様に頼んで、花の香りのするお香を手に入れた。
「あら?今日は、いらしてくれたの?……えーと、クラーノ男爵令嬢だったかしら?」
クラークです。名前を間違えられ、うろ覚えになるほどの名モブっぷりの自分に拍手したい。第一候補と名高いワイアット公爵令嬢のシエラ様のお茶会に来た。
いつもは昼寝タイムなんだけどなーという午後の眠い時間。
「シエラ様にいつもお誘い頂いているのに、私は体が弱くて、なかなか出席できず、申しわけありません」
病弱設定が最近、私のブーム。なにかと理由つけて断りやすく使いやすい。
「まぁ……おかわいそうに。それではなかなか陛下とのパーティーにも参加しにくいですわね。ホホホ」
要はそんな病弱なら、参加しなくてけっこうよと意味を込められている返答。参加するつもりがないから大丈夫ですと心の中で思いつつ、従順にハイと返事をしておく。
お茶会では私も時々ハイとかソウデスネなど言いつつ、当たり障りなく終わっていく。帰り際に、私はこれを受け取ってくださいとシエラ様に渡す。
「まあ!!これは……わたくしのお気に入りのお香!?どうしてわかりましたの!?」
「シエラ様の領地ではお花の栽培が盛んな地域でございます。その花々の中でも、人気の香りものでございます。だからお好きではないか?と」
シエラ様は頬を薔薇色に染めて喜ばれる。そろそろホームシックにもなるころであろうから、自分の故郷を匂わせるものが喜ばれるだろうと思ったのだが、ピッタリハマったようだ。
「ありがとう。クラーク男爵令嬢、故郷を感じられて、本当に嬉しいですわ!」
これで名前を覚えて頂いた。部屋へ帰るまで大人しくしていた私は自室の扉をくぐった瞬間、表情を崩し、ニヤッとした。
「うわ!悪い笑みを浮かべないでください!お嬢様っ!!」
アナベルが非難する。私は手袋、扇をテーブルに置いて、頬杖をつく。
「これで当面のところ、大丈夫ね。自分の安全地帯は確保しておかなきゃね。怠惰ゆえの怠惰に過ごすための怠惰人による策。完璧よっ!」
「悪どい!悪どすぎます!あの贈り物も計算済みだったんでしょう!?頭脳の無駄遣いですよ!」
アナベルがドン引きしている。
「有効活用してるでしょ。さーて、平和を約束されたようなものだし、病弱な私は読書っと」
ドレスをポイッと脱ぎ捨てて、簡易な服装にさっさと着替えた。
「3食をきっかり召し上がっている元気いーーっぱいのお嬢様、なにが病弱なんですかっ!」
ブツブツ言いながら、ドレスを片付けるアナベル。彼女にしてみたら、自分のつかえる主人が王妃候補の中でも一番であれば、どんなに鼻が高いか……申しわけなくなる。
でもアナベルは優しかった。わかっているのだ。私がここに来たのは本意ではないと。お嬢様がかわいそうです!と両親に言ってくれていた。……ごめんね。そしてありがとう。
「お嬢様は呑気すぎませんか?大丈夫ですか?」
「私は無所属無派閥でいたいわ。関わりたくないわ。でもそれって目をつけられやすいのよね」
私は嫌がらせされると対応するのがめんどくさいしという理由で、策を練ることにした。
……うん。とりあえず最大派閥の人に私は無害ですからとアピールしておこう。最適なのは、後宮で一番勢いのあるワイアット公爵令嬢ね。
お父様に頼んで、花の香りのするお香を手に入れた。
「あら?今日は、いらしてくれたの?……えーと、クラーノ男爵令嬢だったかしら?」
クラークです。名前を間違えられ、うろ覚えになるほどの名モブっぷりの自分に拍手したい。第一候補と名高いワイアット公爵令嬢のシエラ様のお茶会に来た。
いつもは昼寝タイムなんだけどなーという午後の眠い時間。
「シエラ様にいつもお誘い頂いているのに、私は体が弱くて、なかなか出席できず、申しわけありません」
病弱設定が最近、私のブーム。なにかと理由つけて断りやすく使いやすい。
「まぁ……おかわいそうに。それではなかなか陛下とのパーティーにも参加しにくいですわね。ホホホ」
要はそんな病弱なら、参加しなくてけっこうよと意味を込められている返答。参加するつもりがないから大丈夫ですと心の中で思いつつ、従順にハイと返事をしておく。
お茶会では私も時々ハイとかソウデスネなど言いつつ、当たり障りなく終わっていく。帰り際に、私はこれを受け取ってくださいとシエラ様に渡す。
「まあ!!これは……わたくしのお気に入りのお香!?どうしてわかりましたの!?」
「シエラ様の領地ではお花の栽培が盛んな地域でございます。その花々の中でも、人気の香りものでございます。だからお好きではないか?と」
シエラ様は頬を薔薇色に染めて喜ばれる。そろそろホームシックにもなるころであろうから、自分の故郷を匂わせるものが喜ばれるだろうと思ったのだが、ピッタリハマったようだ。
「ありがとう。クラーク男爵令嬢、故郷を感じられて、本当に嬉しいですわ!」
これで名前を覚えて頂いた。部屋へ帰るまで大人しくしていた私は自室の扉をくぐった瞬間、表情を崩し、ニヤッとした。
「うわ!悪い笑みを浮かべないでください!お嬢様っ!!」
アナベルが非難する。私は手袋、扇をテーブルに置いて、頬杖をつく。
「これで当面のところ、大丈夫ね。自分の安全地帯は確保しておかなきゃね。怠惰ゆえの怠惰に過ごすための怠惰人による策。完璧よっ!」
「悪どい!悪どすぎます!あの贈り物も計算済みだったんでしょう!?頭脳の無駄遣いですよ!」
アナベルがドン引きしている。
「有効活用してるでしょ。さーて、平和を約束されたようなものだし、病弱な私は読書っと」
ドレスをポイッと脱ぎ捨てて、簡易な服装にさっさと着替えた。
「3食をきっかり召し上がっている元気いーーっぱいのお嬢様、なにが病弱なんですかっ!」
ブツブツ言いながら、ドレスを片付けるアナベル。彼女にしてみたら、自分のつかえる主人が王妃候補の中でも一番であれば、どんなに鼻が高いか……申しわけなくなる。
でもアナベルは優しかった。わかっているのだ。私がここに来たのは本意ではないと。お嬢様がかわいそうです!と両親に言ってくれていた。……ごめんね。そしてありがとう。