「パーティーをサボるんですかーーっ!?」

「あー、うん。適当に病弱な令嬢らしい理由つけといて」

 私はベットに寝転び、本を読みながら、そう言った。

「あ、ありえません!お嬢様、だめです。陛下にお会いできるチャンスです!今夜こそはいらっしゃるかも!?」

「会いたくないから大丈夫よ」

「なんで用意もせず、寝転がってるんですー!?」

「行かないからよ」 

 アナベルと朝からずっとこの応酬をしあっている。

「お嬢様、良いですか?最近のお嬢様の1日
を知ってますか?」

「へっ?」

 アナベルが仁王立ちで腕を組む。

「図書室→朝食→読書→昼食→昼寝→おやつ→読書→夕食→図書室→夜のお茶→就寝です」

「その通りね。さすが私付きのメイド。行動をバッチリ把握してる!」

「違うでしょう!?毎日、このパターンしかないから意識しなくても覚えますっ!」

 私は仕方なくムクッと起き上がる。寝癖を手櫛でちょっと直すとアナベルが微妙な顔をした。

「下手にパーティーに行って、気に入られたらどーするのよ?他の王妃候補から目をつけられたくないわ」

「気に入られるために行くんじゃないんですか?お嬢様なら、目をつけられても、反撃するんじゃ……いえ、なんでもありません。もう良いです」

 諦めて、部屋から出ていき、アナベルはパーティーの欠席を知らせに行ってくれた。

 静寂が訪れた。今日も私は怠惰という名の平和を守れたのだ!……と、またベットにボフッと寝転びながら続きの本を読む。

「……今夜のパーティー、リアンは行かなかったんだって?」

「誰から聞いたのよ!?」

 夜の図書室でウィルが耳聡く聞いてきたことを私に言う。

「病弱なクラーク男爵令嬢はめったに後宮の女性達の集まりにも顔を出さないと聞くけど?どんな美少女なのかと騎士団でも噂だよ」

「えっ…!?裏目にでてる!?」

 騎士団も護衛のためにパーティーに呼ばれるんだとウィルは言う。どの王妃候補が美しいのか男たちは噂してるよと……。

「難しいわ。こんなにサボる加減が難しいなんて!天才と呼ばれた私がそう思うほどなんて怠惰への道は険しいわね!」

「リアンは何に能力を使ってんだろうか?」

 ウィルの目が半眼になっている。

「いや、でも本当に天才かも……読書量がすごいし、その知識が身についてるとしたら……本当に王妃にはもったいない素質かもしれない」

 クロードがそう言うと、ウィルがニッコリと彼に向かって微笑んだ。

「ちょっと黙っててもらえるかな?」

 ハイハイとクロードは静かになった。

「後宮の部屋からでてこないヒロインさんはいつ王妃候補として参戦するんだ?」

「永遠に参戦しないわよ。このまま怠惰への道を極めるわ」
 
「本を読み尽くしたらどうするんだろう?」

「……それは困るわね。陛下に本を買ってくださいってお願いしてみようかな」

「やれやれ……リアンは頑固だからなー」

 そう言ってウィルが笑った。クロードがカウンターに居て、ぼそっと陛下は気性は荒いけど、お優しい方だから、買ってくれると思うよーと小さい声で言った。