水の流れる音を聞きながら、ずっとどきどきしてた。思い返せばふたりきりで会ったのはこれが2回目だ。出会ってすぐに好きになった分、すべてが早送りにでもされたのだろうか。出会って間がないとか、そんなこと何の問題もない。こんなに彼を好きになれて、彼も私を好きだと言ってくれた。それ以外、何もいらない。
シャワーの音が止まり、髪を拭きながら彼がこちらへ来た。上半身は裸で、膝までのパンツを履いている。パチンと音を立てて電気を消してから、彼はベットへあがった。テレビの明かりとキッチンの薄明かりだけになった。
「おいで」
彼が私を呼んだ。私は素直にベットへ上がった。向かい合って座ると、彼は私の後ろ頭を引き寄せてキスをした。
「好きだよ」
それからまた、耳元でそう言ってから私の首筋に唇を這わせた。
彼がリモコンでテレビを消すと、キッチンの明かりだけになった。
薄明かりの中、彼に抱かれた。
「好きだよ」
「好きだよ」
何度も何度も耳元で囁く彼。彼の空気に包まれて、自分の感覚さえ彼に支配されているような錯覚に陥る。私の頭を支えてキスをする彼。私の頬に触れてキスをする彼。強く私を抱きすくめる彼。どんな仕草にもいちいちときめく。彼が好きだと、私の細胞が叫んでいる。私のすべてに彼を刻みつけたい。
その夜は彼の腕で眠った。彼の体温を感じるだけで幸せすぎて勿体無くてなかなか眠れなかった。朝方少し微睡んだが、鳥の声ですぐに目が覚めた。
私が起き上がると彼も目を覚ました。
「帰る?」
そう言った彼はとても冷たく感じ、帰れと言っているように聞こえた。
きっと寝起きだからだろう、悪い予感を掻き消した。
玄関まで私を見送った彼に笑顔はない。
「じゃあまたね」
そう言ってバタンと彼はドアを閉めた。
ガチャリと施錠する音が聞こえた。その冷たい機械音に、言いようのない不安が渦巻いた。
気のせいだ、きっと。一度寝たからと終わりになるなんて、そんなドラマのような出来事が私におこるはずがない。それなのに、どうしてこんなに不安になるのだろうか。
朝日は、寝不足の私には眩しすぎた。