「好きだよ」
彼は耳元で囁くように言った。
胸が締め付けられすぎて小さくなっていくようだ。彼は何度もキスをした。呼吸が浅い苦しさなのか、胸の痛みなのかもう分からなくなり息が荒くなる。
「好きだよ」
彼は何度もそう言って私を抱きしめた。私も彼にしがみつくように抱きついた。強く抱きしめられ、もう彼のことしか考えられなかった。
「ごめん、もうバイト行かないと」
唇を離して彼が小さく言った。
うん、と私は小さく頷いた。
「また来てね、送って行けなくてごめん」
「大丈夫です」
「じゃあね」
別れ際、もう一度抱きしめてキスしてくれた。
私の心が彼が大好きだと大きな声で叫んでいる。
これが最後の恋でいい。迷いなくそう思える人に出会えた。

翌日からは時間を合わせて教習所へ行くようになった。彼は『有楽』でバイトをしていたし、休みの日はいつも直正たちと遊んでいるようで教習所で会うことが多かった。やり取りも頻繁にしていたし、彼の気持ちは私にあると信じていた。
『明日の夜空いてたら会う?明日卒検だから落ちてたら機嫌悪いかもしれないけど 笑』
彼からそんなLINEが届いたのは初めて部屋へ行ってから3週間後の金曜日だった。
『行きます』
すぐに返事をした。
次の日は仕事は休みで、長い時間一緒に居られるといいのにと思った。
何を着て行こうかと埃を立てながらタンスを掻き回した。
幸せだった。