数日間やりとりを続けていた。彼も私に気持ちがあるのだと少し思えた。
毎日、彼のことを考えては胸が騒ぐ。こんな分かりやすい恋をしたのも初めてだった。
1週間程経った木曜日の夕方。
行けたら行くと彼が言っていたので予約も受けられる講習もないけれど教習所へ行った。急いで自転車を漕いで乱れた脈を落ち着かせるため自動販売機の横の長椅子に座った。
鞄から携帯を出そうとした時、隣に誰かが腰を下ろした。
「来てたんだ」
聞き覚えのあるその声に顔を上げる。
「悠樹、くん」
言葉に詰まりながらはじめて名前を呼んだ。
「俺もう帰るけど、凛ちゃんはこれから?」
私の鼓動の速さなどおかまいなしに微笑みかけてくる。
「帰ろう、かな」
そう言いながらも帰りたくなどなかった。
「今日も、バイト、ですか?」
続けて言った私の心を読んだかのように彼はふふっ、と笑ってから言った。
「うち、来る?」
はい、と小さく頷いた。
胸が、心がときめいている。
「じゃあ、行こうか」
彼が先に立ち上がり、私は後ろを追いかけた。期待で胸が高鳴り、苦しいくらいだ。
ふたりで並んで自転車を漕いだ。
私は彼の特別になれるのだろうか。
沈みかけた夕日がゴミだらけの用水路を照らしている。そんな景色さえ澄んで見えていた。
彼の部屋は本当に教習所のすぐ近くだった。
自転車置き場に自転車を止め、階段で3階まで上がった。
「エレベーターなくてごめんね」
と彼は私の手を握った。
心が、いちいち反応する。

彼の部屋はブラインド仕切ってはあるがワンルームだった。ブラインドの向こうにはベットと小さなテーブル、そしてテレビが置かれている。部屋は綺麗に片付いていた。
「バイトあるからあんまり時間ないけど」
彼はそう言ってテレビをつけた。
そんな短い時間に会ってくれたことが嬉しい。
「いえ、急にごめんなさい」
彼はテーブルの後ろへ座りベットへもたれた。きっといつもここに居るのだろう。私もその空間へ入りたくて隣へ座った。
テレビの中では若い世代で恋人のいない人が多いことについて人気女優がコメントを求られていた。
なんとなくテレビを見ながらの話題は直正とあゆのことだった。噂のあゆちゃん、と最初に彼が言った理由を私が聞いたからだ。
「直正、あゆちゃんのこと好きすぎて手ぇ出せなくて。半年付き合ってキスもしなくて優しすぎるって納得できない理由で振られて、知ってた?」
「あゆとそういう話あんまりしなかったから、けど、あゆ可愛いしモテてましたよ」
「そうなんだ?俺は凛ちゃんの方がずっと可愛いと思うけどな」
ドキリと、胸が反応した。
私は俯いてしまい、嬉しいのか切ないのか分からなくなっていた。
彼が私の後ろ頭へ手を回した。その仕草が妙に男っぽく、またときめいてしまう。俯いた私の顎に指をかけ、とても綺麗なキスをされた。私は完全に彼の空気に酔わされた。