街はクリスマス色に染まり、雪の散らつく日が増えてきた。クリスマスが何を祝う日なのか本当に理解しているのだろうか。私はと言えばそんな日でも誘いはさゆりからしかなく、また例の4人での食事会だった。
直正からメリークリスマス、とLINEが届き、直正はあゆのことが忘れられないのではないかと思った。あの時の私のように、私と繋がっていることであゆとの繋がりを持っていたいのかもしれない。残念ながらそれは無意味で、私とあゆは彼と直正ほど近い距離にはいない。
近藤ともたまにやり取りをするようになっていた。しかしそれはどこまでいってもロマンティックな関係にはならない確信がある。近藤のあの日の告白は、さすがにさゆりにも話せなかった。
食事を終えるとさゆりがクリスマスツリーを見たいと言い出した。繊維の会社か何かが自社の駐車場で毎年大きな樅の木のイルミネーションを公開している。去年もさゆりと見に行った。
北川の車にみんなで乗り込み、繊維工場を目指した。
「雪?雨かな?」
最初に気付いたのは助手席のさゆりで、大粒の雫がフロントガラスに落ちた。
「雨だな」
北川が答えるとすぐに土砂降りになり、フロントガラスからは滝のように雨が流れ落ち、ワイパーではとても拭いきれない。冬の急な豪雨など珍しい。
「小雨になるまでどこかで雨宿りした方がいいだろ。この雨でツリーも点灯しないだろうし」
近藤の提案に北川もそうだな、と答えた。
「あそこにカラオケあったよね?」
そう言ったのはさゆりで、『有楽』のことだと分かった。
彼がそこで働いているとさゆりに話した記憶はない。分かっていればさゆりもそんな提案はしないはずだ。