「ごめん、ほんとデリカシーないの分かってて聞くけど、その手、自分でやったんじゃないの?」
そう言われ、鼻の奥が痛くなった。堪えていた絶望は、大きな涙の粒になり膝の上に落ちた。
「ごめん」
近藤はもう一度言った。
私は彼との出会いをすべて話した。
ふたりで会ったのは2回きりだった。好きで好きで仕方なかったけれど、簡単な女だと思われて当然だ。それがこの結果を招いたのだ。
「俺も男だから、男の本能は分からなくはない。凛ちゃん、抱くためなら好きだなんて平気で言う男もきっといる。好意があったとしても、深い関係になったら急に冷めてしまう男もいると思う。残念だけど。」
私には男の本能など理解できないけれど、きっとそうなのだろう。そんな現実など知りたくなかったけれど。
「もう今は分かってます。騙されたことが悔しくて悲しくて受け止めきれなくて。でもどこかで信じていたくてまわりに何を言われても認めたくなくて。毎日朝がくると辛くて。生きてなかったらこんな思いしなくてすむのかと思ったこともあったけど、今は忘れたくて。」
泣き声になって何を言っているのかも分からなくなっている。
「気付くと彼のこと考えてて、早く忘れたいのに。どこが好きなのかさえもう分からないのに」
少し黙ってから近藤が言った。