この日は近藤と初めて会った沖縄料理の店だった。店内が空いていたからか、男性の店主がやけに話しかけてきて、近藤の職業も聞かず解散することになった。
こんな時に彼を思い出してしまう。彼のことなら何でも知りたかった。その情熱を思い出してしまう。早く、早く忘れたいのに。
「俺凛ちゃん送っていくよ」
近藤がそう言い、今度はさゆりたちも驚くことなく受け入れた。
さゆりは近藤が私に好意を持っているのではないかとしきりに言っているが、それはさゆりの願望であり、近藤からそういった感情は微塵も感じられなかった。
近藤の車に乗り、他愛のない話をしてから私の家の近くのコンビニに到着した。
「ありがとうございました」
「凛ちゃん」
お礼を言って車を降りようとした時、近藤が強い口調で私を呼んだので驚いた。
「はい?」
振り返ると、これまで見たことがないような真面目な顔をしていた。
「その手どうしたの?」
「手?」
何のことか分からず疑問符が浮かんだ。
「左手」
近藤はそう言って私の左手を掴み裏に返した。
長袖を着ていたのだがどこかのタイミングで見えてしまったのだろう。また少し引き攣る火傷。皮膚は再生しているけれど、不自然に色が変わり斜めに入った傷のように見える。
「あ、火傷して」
「こんなところどうやって火傷したの?」
厳しい口調の近藤に責められている気分になる。
「近藤さん?どうしたんですか?」
「俺の妹の話なんだけどさ」
近藤は私の手を離し、運転席にもたれ掛かってから話を続けた。