その日は今年1番の寒さになると天気予報士が予測していた。低い雲が空を覆っている。
『今日ご飯いける?』
午後になってからさゆりからメッセージが届いた。
『うん。行けるよ』
『近藤さんが良いことがあったからお祝いしようってたっちゃんが言ってるから』
たっちゃん、とは北川のことだ。
『分かった。何?誕生日とか?』
『違うと思う、仕事のことって言ってたから。夕方迎えにいくね』
『分かった』
近藤と会うのは誕生日以来だ。
そう言えば近藤の職業を聞いていない。あんな金髪で会社勤めが出来るとは思えない。美容師、か何かだろうか。

18時頃北川とさゆりが迎えに来た。
私が乗る時に助手席から後部座席へ移ったさゆりに質問した。
「近藤さんって何の仕事してる人?」
「何してるの?」
今度はさゆりが北川に聞いた。
「あれ?言ってなかったかな?」
「聞いてない」
北川の質問にふたり同時に答えた。
「本人に聞いて。今日も仕事で良いことがあったみたいだから」
北川がもったいぶるので気になってきた。
店の駐車場へ入ると近藤は既に到着していて入り口で待っていた。寒そうに手を擦っている。
「中入ってて良かったのに。寒かっただろう」
北川の言葉に、今来たばかりだから、と近藤は答えた。