もう一度だけでも彼に会いたかった。私がもう少しうまくやればまた会えたのだろうが。生まれ変わってもう1度やり直したい。
どんなに後悔しても時計の針は戻らない。やり直すことなんでできない。
こんなふうに騙されるなんて悔しいけれど、最低な男だとしても恋しくて。
でももう忘れよう。19才になった今日から忘れよう。まだ恋しさに負けてしまいそうだけど、クズな男だったと忘れよう。
私が壊れてしまう前に忘れよう。頑張ろう。頑張って彼を忘れよう。
19才の誕生日は今まで生きてきた中で1番辛い日になった。

12月に入ると寒さは増していった。低い雲が広がる日が多く、頬が痛いほどの寒さだ。もう夏の暑さを思い出せない。
私は彼のことを考えない努力をしていた。朝起きるとまだ喪失感に襲われるけれど、今日の予定を考える。さゆりにメッセージを送る。彼の名前は口に出さない。そんな日々を送り、少しずつだけれど彼のことを考えない時間を増やしていった。
手首の火傷はすぐに水疱になり、痛み、そして破れて赤い皮膚が見えていた。私の細胞はその火傷を治そうとしている。治癒能力はちゃんと機能している。心もきっと再生しようとしているはすだ。

あの日近藤にもらったガーベラは強く、切花とは思えないほど長持ちした。だからあんな花言葉なのかもしれない。