私が場の空気を濁してしまった食事会は3人のおかげで和やかな雰囲気に変わり、2時間程続いた。
「今日は本当にごめんなさい」
店を出て近藤に謝罪した。
隣に立つと、嫌味のないワックスの匂いがした。
「全然大丈夫。また機会あれば」
そう言えば近藤の素性も何も聞かなかった。
初対面で強く惹かれてしまうなんて、本当に私は悠樹の何を見たからなのだろうかと些細な瞬間でも彼を思い出さずにはいられない。
近藤に挨拶してから私たちは北川の車へ乗った。
「近藤さんいい人だったね」
後部へ座りさゆりはすぐにそう言った。
「そうだね、面白い人だね」
私もそう答え作り笑いをした。作り笑いでも笑えるようになったのはさゆりのおかげだ。
さゆりの家に到着し、北川の車から降りた瞬間、視界に入った空にはたくさんの星が光っていた。こんな星空を見たのは久しぶりだ。
「星、きれいだね」
さゆりも同じ空を見て言った。こんなふうに同じことを感じられるさゆりがいると思うと泣けてきた。
「どうした?」
そんな私に気付いたさゆりが私の顔を覗き込んで言った。
「ううん、なんもない。星がきれいだから」
「大丈夫?今日泊まっていく?」
「大丈夫。明日仕事だし」
「分かった。気を付けて。家着いたら連絡して?」
私の手を握ったさゆりに彼氏か、と言って笑って見せた。