私たちを乗せた北川の車は派手に構えた居酒屋のような店の駐車場へ入った。赤と金で飾られたなんともはいからな外壁だ。
「もう来ると思うから」
北川が携帯を見ながらそう言い、店の前で3人でしばらく待機していた。それらしい自動車から降りてきた運転手が申し訳なさそう北川にごめん、ごめんと言った。
「彼女?」
そう聞かれた北川がさゆりの肩に触れた。
「はじめまして。あ、お待たせしてすみません。近藤です。なんか俺だけ喋ってる?」
近藤と名乗った北川の友人は続けて言った。
「彼女18って言ってたっけ?」
私たちは自然と店の入り口へ向かい、北川が19にもうなった、と答えた。
「だとしてもお前‥」
近藤は含み笑いをした。
店内へ入ると、いらっしゃい、と威勢の良い声が飛んできて、テーブル席へ案内された。店内は赤で統一されていて所々に海の写真が飾られていた。行ったことはないが沖縄の海だろうと思った。
私とさゆりは並んで座り、私の正面に近藤が座った。派手な金色に近い髪を無造作にワックスで固め、北川の友人とは思えないカジュアルな軽装だった。私とは別の世界で生きている人のように思えた。歯科医の北川も別の世界の人のように見えていたが、それとはまた違った。
「凛なに食べる?」
さゆりがメニューを開いて言った。
オススメの欄によく聞く沖縄料理が載っていた。
「何でもいいよ」
食欲もなく、ありきたりな答えで返した。
「ヘルシーがいいかな」
さゆりが呟いた時、LINEのメッセージ音が鳴った。
直正からだ。
『さっきは酷いこと言ってごめん。また飯でも行こう』
「凛?」
さゆりの声に瞬きをすると、硬そうな木製のテーブルの上に涙が落ちた。
「ごめん」
そう言いながらも、堪えていた涙が止まらなくなった。