「はい」
「そっか、じゃあまたね」
と言った後で直正が言った。
「あ、凛ちゃんの連絡先聞いておいていい?」
「あ、はい」
私は直正と繋がることで悠樹との関わりを持っていられると卑怯なことを考えていた。
彼を忘れるなんて、できるはずがない。
直正を残し車に戻ってからさゆりに電話を掛け直した。
嘘が本当になり、私はさゆりの家へ向かった。道中LINEがきていた。さゆりの彼氏北川とその友人も一緒に食事へ行こうという内容だった。北川とは何度も食事へ行ったことはあったし、その友人がいても何ら抵抗はない。北川は私たちより9つ年上で、さゆりの彼氏でないとしてもきっと異性として意識することはなく、さゆりの心情は理解できなかった。
さゆりと北川は駐車場で待っていて、北川の車に乗り換えた。さゆりとふたりで後部へ座り、直正との会話を話した。北川に聞こえているだろうがそんなことはどうでもいい。
「ほんとクズだね、人として終わってるから」
さゆりはそう言い放った。
そんな反応は予想できていたけれど、直正の言葉をひとりで抱えることができなかった。それでも彼のことをそんなふうに言われると悲しくなる。彼をこんなにまで好きになった理由などもう分からない。ただ分かっているのは一度好きになってしまった気持ちは簡単に消えないということ。誰といても何をしていても彼のことが頭から離れない。
手に入ったと思った幸せはとても儚かった。
それでもこれが最後の恋でいいとまだ思っている。