そんなある日から5年が経ったある日――。


最近、社長に変な様子ない?

恵美からの連絡で、ないけど……どうしたん?


私から見て普通やけど、恵美が訊いて来るということは……恐らくラウンジかキャバクラでのこと。

長年、キタでホステスをしている恵美は。

自分の店以外の噂なんかも耳に入ってくるらしく、陽希さんが恵美の働いている店以外にも出入りしていることを知っている。


『妙な噂を耳にしたから心配になってな。連絡してん』


その噂が何かと訊くと――…。

キララの玲って子が、いつも陽希さんにべったりなのは、その界隈では有名な話で。

陽希さんを好きってあちこちで言っているらしく、当の陽希さんは彼女がいるからって言い続けているらしいけど。

お構いなしって感じの玲が、フランス人で恵美の店にも陽希さんと一緒に来た事のあるお客さんと、界隈の路地裏でコソコソ話していているのを、ホステス数人が目撃していて、噂になっているらしい。

陽希さんにべったりの子やなって。


そのフランスの人の名前は……もしかして?


私が思い付くのは1人しかいないから、恵美に訊いてみると、アダンやった気がする。


やっぱり!

けど、どうしてアダンと玲さんが?

今はとりあえず恵美には、ありがとう、と電話を切ってんけど……頭の中はハテナでいっぱい。


陽希さんに直接、言う?

いや……言った所で、気にすんな、で終わる気もする。

それでも、モヤモヤは残したくないしな。

戻ったら、訊こう。

足早に店からオフィスへの道のりを急いだ。