「悪い、困らせるってわかってたしあの時言うのは弱ってるとこにつけ込むみたいで嫌だったから言わなかったんだけど」
どうしていいかわからずただ俯くだけの私に伊月くんが優しく声をかける
あぁ、そうだったんだ
あの時の“話”って
このことだったんだね…
「上手くいったらいったで結構後悔してる…」
困ったように微笑まれる
あの時伊月くんは自分の気持ちを押し殺してまで私を励ましてくれた
そんな優しさを知って胸がまたズキン、と痛む
「私…伊月くんのこと、友達だって思ってて…
だから…」
振り絞った声が震える
「わかってる、最初は早川の片思いだと思ってたけど違った…邪魔するつもりなんかねぇよ
俺は、“友達”でいい」
だからそんな顔するな、と頭に大きな手の平が乗って
その温かさに泣きそうになった
「っ…、ご、ありがとう」
きっと今言う言葉はごめんねじゃない
伊月くんはきっとそんなふうに謝ってなんかほしくない