「山田さんとは何もしてない」
響くんがぽつり、と呟いた言葉に俯いていた顔が上がる
そんなはずない…
確かに2人の口元は見えなかったけど、あれは確実にそういうことだった
「キスすれば綴ちゃんには何も危害を加えないって言うからそうしようと思った…でも、してないよ俺」
そんなことがあったなんて知らなかった
きっとそれを響くんは理科室で伝えようとしてくれていたのに聞かないと拒絶したのは自分
私のせいだったんだ…
申し訳なさでいっぱいになる
響くんに頬を優しく撫でられて涙が零れそうになった
「どう、して…?」
「俺がキスしたいと思うのは綴ちゃんだけだから」
熱を持った瞳に魅入られてドキン、と胸が大きく跳ねる
それって、響くんが私の事を特別だと思ってくれてるってことでいいんだよね…?
ぽた、と私の頬に触れる響くんの腕に涙が落ちる
溢れた涙と一緒に抑えていた感情が吐き出された
「私ね…他の誰かが響くんの髪をセットしてるって気づいた時も響くんが山田さんといるところを見た時もすごく嫉妬したの」
早川王子と呼ばれてもてはやされている響くんのことも全然ちがうよ、なんて1人だけ否定していたのもきっとヤキモチ
「それで気づいたんだ、これが恋なんだって
私…響くんが好き」