カランカラーン!鐘の音がなる。
「三等ミカン一箱でーす!」
スーパー『ダイキチ』の感謝祭に来ている。三等らしい。私の前の人が当てたものだ。うれしそうに重たい箱を抱えていく。
いいなぁ!ビタミンCたっぷりミカン。一箱もあると、毎日コタツでミカン食べ放題。
「次の人、どうぞー!」
「は、はいっ!」
私の番だ。この日のために、貯めた抽選券!今こそ!チャンスは5回っ!
こっそり転生陰陽師の私の力をみせてあげるわ!
ガラガラガラガラ。回る。
コツーン。乾いた音が響いた。
……白い玉がだった。
「はーい!ポケットティッシュでーす」
ですよねー。転生陰陽師の力とか全然関係ないよね。言ってみただけ。でも残り4回もあるし、いける、いける!!
………私はポケットティッシュ5個握りしめて帰宅した。
「あーあー。一等の欲しかったなぁ」
チャリチャリと自転車を漕ぎつつ、帰る。
やっと暖かくなってきたとおもったら、今日は季節外れの寒さで風が顔に当たると刺すように痛い。
買い物袋を左手に持って、家の鍵を開けようとした時、足元でにょろりと何かが動いた。
「へ、へびー!?」
私の声に反応して頭を持ち上げてこちらを見た。……目を合わせたらダメ!あ、それクマだっけ?
「すいません。お水をください」
ヘビが喋る!?そこで私は気づく。
「なんだまた妖なのね」
私の動揺は消えた。
「……ヘビは苦手なのに妖のヘビは大丈夫なんですか?」
「そういえばそうね……待ってて。お水を持ってくるわ」
私は皿にお水を入れてあげる。白蛇はホッとしたように飲む。
「旅の途中でして、休憩場所を探していました。それというのも、私の友人が旅に出ると行ってから帰ってこなくて、探すために出てきたのです」
はあ……と私は玄関先で身の上話を聞く。
「この家の玄関は掃き清めてあり、なにか惹き寄せられるものがありまして……」
私の力のせいかな?でも結界を張ってあるから寄りにくいはずなんだけどなぁ。
「助けを求めて来たわけです。お水をありがとうございました。元気になりました」
「いえいえ、たいしてお構いもできなくてごめんなさい」
白蛇と私は同時にペコリと頭を下げた。
「優しきこの家の主人に幸ありますように」
そう言って白蛇はスルスルと這っていった。友人に無事に会えると良いのだけど。
その日の夕方、珍しく早く秋生《しゅうせい》さんが帰ってきた。
「へぇ。抽選券ね……ポケットティッシュ5個かぁ。残念だったね。僕、補助券を7枚持ってるけど、ひまりちゃんは?」
10枚で抽選券になる!私は財布をゴソゴソ探す。
「3枚あるっ!」
一緒に後一回してみようか?と秋生さんはニコニコしながら、上着を着て、スーパーへ行ってこよう!と言う。
カラカラカラと再び回す。
カツーンと音がして青色の玉が出た。もしかして!?
「大当たり〜!……はい。ミカン一箱でーす」
「やったー!ビタミンC!………じゃなくて、惜しかったわ」
私は嬉しいような残念なような気持ちになった。でもポケットティッシュじゃないのは、もしかして白蛇が幸を願ってくれた効果?
「どうしたの?何欲しかったんだい?」
夕暮れに赤く染まる道を歩きながら、秋生さんは尋ねてきた。けっこう重いはずのミカン箱を軽々と持って歩いているのがすごい。
「温泉旅行行きたかったの。一等なら温泉旅行だったの」
「温泉旅行に行きたかったのか!」
「ほんとはどこでも良いの。温泉旅行当てたら秋生さんと一緒にいれる時間が作れるでしょう」
私の言葉にメガネの奥の目が細められて、とても優しくなった。フッと微笑む。
「温泉旅行行こうか?予約しておくよ」
「ほんと!?お仕事忙しくないの?」
「ひまりちゃんのためなら、仕事を死にものぐるいで終わらせてくるよ」
「やったー!」
私が無邪気に喜ぶと、秋生さんはミカン箱をなんと肩に担いで、もう片方の手で、ギュッと手を握りしめてきた。
白蛇の幸運の効果が続いてるのかしら?と私は心の中で『こちらこそありがとう』と白蛇に礼を言うのだった。
「三等ミカン一箱でーす!」
スーパー『ダイキチ』の感謝祭に来ている。三等らしい。私の前の人が当てたものだ。うれしそうに重たい箱を抱えていく。
いいなぁ!ビタミンCたっぷりミカン。一箱もあると、毎日コタツでミカン食べ放題。
「次の人、どうぞー!」
「は、はいっ!」
私の番だ。この日のために、貯めた抽選券!今こそ!チャンスは5回っ!
こっそり転生陰陽師の私の力をみせてあげるわ!
ガラガラガラガラ。回る。
コツーン。乾いた音が響いた。
……白い玉がだった。
「はーい!ポケットティッシュでーす」
ですよねー。転生陰陽師の力とか全然関係ないよね。言ってみただけ。でも残り4回もあるし、いける、いける!!
………私はポケットティッシュ5個握りしめて帰宅した。
「あーあー。一等の欲しかったなぁ」
チャリチャリと自転車を漕ぎつつ、帰る。
やっと暖かくなってきたとおもったら、今日は季節外れの寒さで風が顔に当たると刺すように痛い。
買い物袋を左手に持って、家の鍵を開けようとした時、足元でにょろりと何かが動いた。
「へ、へびー!?」
私の声に反応して頭を持ち上げてこちらを見た。……目を合わせたらダメ!あ、それクマだっけ?
「すいません。お水をください」
ヘビが喋る!?そこで私は気づく。
「なんだまた妖なのね」
私の動揺は消えた。
「……ヘビは苦手なのに妖のヘビは大丈夫なんですか?」
「そういえばそうね……待ってて。お水を持ってくるわ」
私は皿にお水を入れてあげる。白蛇はホッとしたように飲む。
「旅の途中でして、休憩場所を探していました。それというのも、私の友人が旅に出ると行ってから帰ってこなくて、探すために出てきたのです」
はあ……と私は玄関先で身の上話を聞く。
「この家の玄関は掃き清めてあり、なにか惹き寄せられるものがありまして……」
私の力のせいかな?でも結界を張ってあるから寄りにくいはずなんだけどなぁ。
「助けを求めて来たわけです。お水をありがとうございました。元気になりました」
「いえいえ、たいしてお構いもできなくてごめんなさい」
白蛇と私は同時にペコリと頭を下げた。
「優しきこの家の主人に幸ありますように」
そう言って白蛇はスルスルと這っていった。友人に無事に会えると良いのだけど。
その日の夕方、珍しく早く秋生《しゅうせい》さんが帰ってきた。
「へぇ。抽選券ね……ポケットティッシュ5個かぁ。残念だったね。僕、補助券を7枚持ってるけど、ひまりちゃんは?」
10枚で抽選券になる!私は財布をゴソゴソ探す。
「3枚あるっ!」
一緒に後一回してみようか?と秋生さんはニコニコしながら、上着を着て、スーパーへ行ってこよう!と言う。
カラカラカラと再び回す。
カツーンと音がして青色の玉が出た。もしかして!?
「大当たり〜!……はい。ミカン一箱でーす」
「やったー!ビタミンC!………じゃなくて、惜しかったわ」
私は嬉しいような残念なような気持ちになった。でもポケットティッシュじゃないのは、もしかして白蛇が幸を願ってくれた効果?
「どうしたの?何欲しかったんだい?」
夕暮れに赤く染まる道を歩きながら、秋生さんは尋ねてきた。けっこう重いはずのミカン箱を軽々と持って歩いているのがすごい。
「温泉旅行行きたかったの。一等なら温泉旅行だったの」
「温泉旅行に行きたかったのか!」
「ほんとはどこでも良いの。温泉旅行当てたら秋生さんと一緒にいれる時間が作れるでしょう」
私の言葉にメガネの奥の目が細められて、とても優しくなった。フッと微笑む。
「温泉旅行行こうか?予約しておくよ」
「ほんと!?お仕事忙しくないの?」
「ひまりちゃんのためなら、仕事を死にものぐるいで終わらせてくるよ」
「やったー!」
私が無邪気に喜ぶと、秋生さんはミカン箱をなんと肩に担いで、もう片方の手で、ギュッと手を握りしめてきた。
白蛇の幸運の効果が続いてるのかしら?と私は心の中で『こちらこそありがとう』と白蛇に礼を言うのだった。