「えぇっと⋯主上?どのような用件でこちらに、?」

戸惑いながらも私はそう聞いた。すると主上は少し笑った。本当に先程と同じ人だろうか?

「用がなかったら来ては行けないのか?」

私は首を横に振りながら少し考える、そろそろ仕掛けてみてもいい頃かもしれない。

「いいえ!そんなことは⋯⋯でも、陛下が居らっしゃることが分かっていればもっと身だしなみに気を使ったのにな、、と思いまして」

私はそう言って頬を赤く染め、少し俯いた。すると陛下は目を見開いた。

媚びを売ってくる女が嫌いなら⋯初心な女だったらどうだろう?

「お前は愛いなぁ、そんな事しなくても十分綺麗だ、愛琳」

陛下が私に微笑みかけてくる。

やはり私のことがお気に召したのだろうか、他の人に接する時と私に接する時の態度が明らかに違う。そんなことを思っているうちに、料理が出来上がったようで運ばれてくる。

「ん!これ凄く美味しいです!」

私は口元を手で隠し、そう言った。しかし本当は、本音五割、嘘五割だ。

きっと大袈裟なくらい反応した方が陛下はお気に召すだろうから。

「そうかそうか、南部の料理は初めてか?」

料理を口に運びながらもそんなことを聞いてくる陛下。

⋯先程から陛下の御声が甘すぎる。私に気があるのだろうか?

「はい、実は⋯でも凄く美味しですね!箸が止まりません!、」

私はそう言って目の前の料理を口に運ぶ。が、実際は緊張で味なんてしない。それでも何とか完食する。

その後も少し会話をしていると時刻はあっという間に夜になる。

「お前ももう疲れただろう。寝室に行くか?愛琳、」

私が肯定すると、主上は私を横抱きにし寝室へ連れて行った。私は驚き体に力が入る。しかし陛下は気にも留めず、寝台まで私を運ぶ。

今夜は⋯⋯眠れそうにない。