「ここが徳妃様のお住いになる桔梗宮でございます」

暁東はそう言って下がった。煌びやかな装飾が施された、生活感のない部屋だった。

盧元徳妃の趣味だろうか?長旅で疲れた私は近くにあった椅子に座り一息ついた。

「李徳妃様、お疲れのところ申し訳ありませんが今後のご予定についてお話させて頂いてもよろしいでしょうか?」

麗花は主上のご厚意によって来た侍女。そのため無下には出来ないこの娘を侍女頭にする他ないのだろう。

「愛琳で良いわ、今後の予定ね⋯何があるの?」

麗花は持っていた紙を私に見せる。

「まず、他の四夫人の方々と顔合わせをして頂くため、茶会を催しております。明日は許貴妃様、三日後に呂淑妃様、そして九日後に範賢妃様とになります。」

四夫人、きっと彼女達は簡単にそれぞれの地位に登り詰めた訳ではないと思う。

全員一筋縄では行かない人ばかりだろう。事前の情報が必要だった。

「そう⋯分かったわ。ところで他の四夫人の方々はどんな人達なの?」

すると麗花は少し考える素振りを見せた。

「まず(キョ)貴妃様は御歳二十二で主上と1番御歳が近い方です。四夫人の中で一番物腰が柔らかで主上と幼なじみだそうです。次に()淑妃様は四夫人の中で一番御実家の位が高く、主上の親戚に当たるそうです。詳しくは分かりませんが⋯中々勝気な性格をされているそうです。そして最後に範賢妃様は四夫人の中で唯一懐妊されている妃です。懐妊される前は1番主上の寵愛を受けていたように感じますが⋯⋯主上は御通りが少ないので実際は分かりません。四夫人の中で唯一愛琳様より位が下の妃様ですね。私が知っている情報はこの位です。」

流石にそれぞれの良いところしか言わない。

従者としては模範だが、私の求めている情報はそうではなかった。しかし、これだけでも収穫だろう。私は礼を言った。

「次に後宮についてのことですがー。」

麗花の説明は永遠と続いていく。覚えることが多すぎて頭が痛くなり始めたがそれを悟らせないよう笑顔で聞き続けた。