「わっびっくりした。なーちゃんいたの」

「ごめん、今声をかけようとしてたの」


そういえば私、普通は先に部屋のノックをしないといけないところなのに、気が急いたのか初手から勝手にドアを開けようとしていたな……。

なんだかそれもこの人を相手にするとバレているような気がしないでもないけど、そんなことを気にしている場合ではなかった。


「ちょっと聞きたいんだけど、神代家の人たちの中で、猫アレルギーの人っている?」

「え、猫アレルギー?急にどうしたの」


要領を得ないという顔をして、白亜くんは困ったように首を傾げる。


「いるかいないかだけ教えて」

「え、うーん。僕が知る限りじゃ多分いない、と思うけど……」


私の勢いに圧された白亜くんが、記憶を探るように視線を空に散らす。

彼の言葉に光明を見出した私の表情がぱっと明るくなった。


「本当!?じゃあ、猫が嫌いな人はいる?」

「うーん、父さんも母さんも特に嫌ってる風な話は聞いたことないな。僕は好きでも嫌いでもないし、クロは……昔は好きだったみたいだけど、でも最近一緒に怪我してた猫を助けたんでしょ?……って、ああ、そういうことか」


そこまで言いかけた彼が、私のこの脈絡のない話の意図と目的を察したらしい。

だけど、その顔色は依然晴れず、変わらず難しそうな表情を貫いている。


「え、なに……?やっぱダメ、かな」

「どうだろう。僕はあまり考えたことはなかったけど……。まあ、訊いてみればいいんじゃない?父さんと母さんにも」


白亜くんの歯切れの悪い物言いに一抹の不安を煽られながらも、私はその言葉に従い、素直に二人に相談するべくリビングへ降りるのだった。