「同じ年ごろの男の子と比較し、体重の減少と、三日間食事を十分にとっていなかったことによる軽度の栄養失調を認めます。このまま療養することで回復は見込めるでしょうが、念のため1週間程度は当院にて入院されることをお勧めします」

医師はベッドに横になる僕の隣で、聖さん――父さんに、そんな話をしていた。


「どうか、息子をよろしくお願いします」

頭を下げる父さんの横顔は憔悴していて、まるで自分を責めているようなそんな顔だった。


この人は、どうしてこんなに苦しそうな顔をしているのだろうか。

僕のことなんて、どうでもいいだろうに。


僕は他人事のように冷めきった感情で父さんを見ていた。

元々僕は母さん似だったし、実感が湧かなかったというのも大きい。


強いて父さんに似た点と言えるのは、目や髪色などの、全体的に薄い色素くらいだろうか。

母親の髪は真っ黒だったから、僕の半ば金に近いようなミルクティカラーは恐らく父親譲りなのだろうとは思っていたが、そこだけは彼を見て納得のいったポイントだった。

後で聞いた話によると、父はどこかの国のクオーターらしくて、祖父母の髪色は黒に近かったらしいから、恐らくそれらは隔世遺伝と呼ばれるものだ。黒髪は優性遺伝だから、僕への遺伝も含めて、すごく珍しいことらしい。


なんて、全く状況に見合わない思考を巡らせるくらいには、僕にとってはどうでもいい話だったのだ。


その後、保護施設から病院の大部屋へ移され、世の中が新年を迎えて活気づく中、消毒剤のにおいが立ち込める無機質な病室で、僕はしばしの間、入院生活を送ることになる。

その間も日を跨がない内に何度も何度も僕の見舞いに訪れる父に対して、この人は暇なのかな、なんてやっぱり僕はどこか冷めた見方をしていて、それでも父は1日も欠かすことなく、子供の好きそうなおもちゃやお菓子を両手に抱え、毎日僕に会いに来た。