時間帯が夜中の1時を過ぎ、僕がふと瞼を一瞬閉ざしたのだろう。

本来は5歳児がこんなに夜遅くまで起きていることすらおかしな話なのだから、眠気を訴えて当然だと思われたらしい。


「とりあえず今日はこの辺で……」


婦警よりも経験の豊富そうな男性警察官が調書を取る彼女に小声でそう耳打ちするのが聞こえた。

婦警も時計を見返し、はっとした表情になってすぐにペンを置く。


「ご、ごめんね白亜くん!もう眠かったよね!」

「え。あ、はい。大丈夫です」

「無理しなくていいの!今日はとりあえず保護施設のベッドでお休みしようか」


僕が何かを言う前に、2人の警察官は目配せをして、寝所の準備をしてくれていたようだった。

警察によって保護された子供が一時的に寝食を行う場所として提供される一時保護施設。


十分な食事をとっていなかった僕は、おにぎりと吸引ゼリーという謎の組み合わせの軽食を手渡されて、そのまま保護施設へと移された。


翌日には警察が手配した小児科医が僕の個室を訪れ診察を行う予定だったのだが、僕が自覚していた以上に体が疲労を感じていたのか、僕はなかなか目覚めることがなかったようだ。

そうして深く眠り続けていた僕が、母の代わりに連絡を受けて駆け付けた父と再会を果たしたのは、翌日の夕方5時を回った後のことだった。


まだ覚醒しきらないぼんやりとした意識のまま、医師の指示に従って診察を終えると、その結果は話したこともろくにないような、初対面同然の父親を名乗るその人に告げられた。

医師や看護師から「神代さーん」と聞きなれない名前で呼ばれていて、本当にこの人が僕の父親なのか、半信半疑でその光景を眺めていたことを憶えている。