「あー、そこの2人!いや、3人か。ストップストーップ」


イトコでもあるはずの櫂先輩になるべく目を合わせないよう、そそくさと教室を後にしようとする双子たちを追って私も退出しかけたその時。

部屋を出る寸でのタイミングで、教卓からニコニコ笑顔で近付いてきた櫂先輩ご本人様にそれを制された。

振り返ることはしないものの、一応は先輩だからか、体は自然と歩みを止めてしまった二人にさりげなく同情の目を向ける。


「よう、俺の可愛い弟ども!久々の再会が恥ずかしいからって、そう逃げることはないだろう?」

「……いつから僕たちは櫂の弟に?」

「俺の愛すべきイトコであり、可愛い妹の友人とくれば、それはもう立派な兄弟!違うか?」

「ちげーよ」


諦めて振り返る双子の顔は明らかに迷惑そうで、どうすればいかに早くこの場を切り抜けられるか思案している様がくっきりとあらわれている。


「半年以上ぶりの再会だというのに冷たいなぁ二人は!なんだなんだ?反抗期か?ん?って、クロに至っては万年反抗期だったな!ハッハッハ!」

「……うぜえ」


顔を覗き込まれた黒芭くんの怒りゲージが見る見る上昇していくのがわかる。そう遠くない内に爆発しそうだ。


「シロー、お前まーたイケメンに磨きがかかったな~?選り取り見取りで毎日ウッハウハだろ?んんん?……なーんて話してるそばからおいおい、どっちのガールフレンドだ?」

「え!?」


すると唐突にその標的が私へと移行した。

予期していなかった私は、咄嗟に上手く言葉を返せずあからさまに狼狽える。


「あーもう、そういうんじゃないから。彼女はその……父さんの知り合いのお孫さんで、母さんの親友の娘さんだよ」

「ほーん?わかるようで、わかんねーなぁ?」


白亜くんが面倒臭そうに答えると、櫂先輩は口元に片手を添えながらニヤニヤと私を見定めるように観察した。

い、居心地が悪い……。