「は……?俺が、イベント実行委員……?」


その日の放課後を迎え、私と白亜くんは揃って、冷ややかに怨恨を募らせる彼の席の前に立ち、理不尽にもその怒りの矛先を向けられていた。


「わ、私たちは悪くないよ。指名された側であって、指名したのは……学級委員だし」

「学級委員……。おい颯介、俺を嵌めたのはテメーかよ」

「いやいやいやいや!俺ちゃうて!何なら俺も被害者や!悪いのは全部エレナやねん!」


この後、別の教室で実施される委員会別の定例会議に出席するため、私たちは開始時刻までの間、しばらく教室で待機していた。

エレナがお手洗いで離席している今、ようやく目を覚まして即刻家に帰ろうとしていた黒芭くんを、私と白亜くんが引き留めて今に至る。


「アイツ……。マジでろくなことしねー」

「そればかりは同意だねー。僕、結構放課後も忙しいんだけどなー」

「つか、俺今日店長にヘルプ入るよう頼まれてんだけど」


白亜くんのそれに今日の都合を思い出したらしい黒芭くんが、余計にしかめっ面を深くしてため息を吐く。

最近知ったのだが、黒芭くんは黒芭くんで、聖さんの知り合いの方が経営するカフェで時々厨房のアルバイトをしているらしい。

だからこの間の動物病院の診療費も、さらっと払うことができたみたい。


「それ言うたら俺も部活遅刻やし!俺エースやで!エースの遅刻なんて恰好つかへんやん!ほんま勘弁してほしいわー」


そう言ってちょっと大げさにリアクションする颯介くんの声が聞こえたのか、

「ははーん?颯介はそんなにこのアタシと委員会の仕事するのが嫌っつーわけ?」

教室に戻ってきたエレナは、ずかずかと颯介くんの目の前まで押し寄り、そのまま超至近距離まで顔を近づけて彼の視線を強取する。


「……!?な、何やねん!」

「中等部の頃、アタシに言ったよな?アタシがいつか何かに困った時がきたら、絶対俺が助けるってさ?」

「……!い、いつの話やねん!もう忘れたわそんなもん!てか、近いねん!!」


……おやおや??


エレナの綺麗な横顔が颯介くんの間近に迫り、彼は一瞬にして顔を赤らめる。

ついには耳まで火照りが移ると、エレナから逃れるように身を引き、彼は即座に距離を取った。

その光景を静かに眺める私と双子の視線に気付いた彼が、今の状況を誤魔化すように、


「え、エレナも来たことやし、ほな行こか!これで遅れたら洒落にならへんやろ!」


そう早口でまくし立てると、すぐさま背を向けてドアの方へと逃げるように歩いて行った。