エレナによってイベント実行委員に指名された私たちが反応する前に、双子のファンと思わしき女子生徒たちが声を上げ始める。


「ちょっとエレナ!シロがやるなら私もやるから指名し直して!」
「えっずるい!私だってクロくんとならやりたい!」


口々に抗議する女子生徒たちを前にしても、エレナは「異論は認めませーん」と彼女たちの要望をまとめて切り捨てた。


あーあ……。

まーた私が理不尽なやっかみを引き受ける羽目に……。


そう肩を落としかけた私の耳に、ニヤリと怪しい笑みを浮かべたエレナの追撃が降りかかる。


「そもそもさー。アンタたちは、シロやクロ相手に下手に下心持ってる妙な女が委員会を言い訳にして抜け駆けしてもいいわけ?それくらいなら、この中で最も心配のいらない“親戚”の菜礼に任せた方が一番平和的解決に繋がると思わねーか?」


な……!?

私は明らかに悪い顔をしてほくそ笑んでいるエレナを見上げて、目線で反意を訴える。

そんな私の意思とは裏腹に、辺りの女子生徒たちは次第に顔を見合わせて、

「それも……そうかも?」
「確かに、エレナの言ってること、一理あるよね……」

あろうことか、エレナの思惑にまんまと乗せられ始めている始末である。


「「「異議ありませーーん!」」」


その後、呆気なく彼女の策略に堕ちた様子のクラスメイトたちは、今度は口を揃えてその決定を支持し、しまいには女子全員で応援の拍手まで送り始める事態となった。

そもそも私も白亜くんも、一応言うと黒芭くんも、誰もまだ承諾はしてないんだけどなー……。


それを目線でもう一度エレナに伝えてみるが、わざとなのかたまたまなのか、どこまでも涼しい顔で微笑んでいる彼女にはもはや打つ手無しのようだ。


「他の委員会は別に誰でもいいからクジで決めまーす!あ、でも学級委員はそうだなー、ん-、颯介でいっか」

「なんでやねん!!!!」

「「「異議なーーし」」」


ここ一番の“なんでやねん”を聞き出したエレナは、颯介くんの存在自体をスルーして勝手に話を続けていく。

結局颯介くんもやむなくエレナの決定に従う他なくなり、思ったよりもずっと早く、委員会の役員決めは終結したのだった。