「シロー、おはよー!雑誌見たよぉ~♪」

東蘭高校に転入して数日が経った頃。

私より少し先に教室に足を踏み入れた白亜くんを、待ってましたといわんばかりに取り囲むクラスメイトの女子生徒たち。


同じタイミングで登校してきたエレナが、状況を察して一言「あれはしばらく通れねーな」さっぱりとした口調で呟いたので、仕方なく私たちはもう一方のドアから中へ入った。


「雑誌ってなんのこと?」

「ん?それは――」


エレナが私の質問に答えようと口を開きかけて、丁度近くの女子の席に置きっぱなしになっていたその“雑誌”が目に入ったらしい。


「お、どうせこれじゃねーの?」


誰のものかもわからないその雑誌を勝手に拾い上げて、流し見しながらページを捲っていくエレナの隣で、私もそれとなくそれらのページを追いかける。


「お、これだな。おー、スゲーなシロの奴。今回はまるまる1ページシロ特集かよ」

「……!?ちょ、ちょっとエレナ。これって……」

「てか菜礼、シロから話聞いてなかったんだな。アイツ、たまにふらっとメンズ読モしてんだよ。生意気だよなー!」


それは校内でも周知の事実らしく、エレナが広げた雑誌の誌面には、“謎につつまれし大注目のイケメン読モ!神木亜白(かみき あしろ)くんの7日間密着コーデ♪”なる見出しがでかでかと表記されており、様々なファッションに身を包んだ彼の7日分のスナップ写真が掲載されていた。

爽やかな笑い顔、あまりイメージのないクールな横顔、高校生らしい茶目っ気あふれる笑顔、色々な表情をさらけ出した器用な姿に、不覚にも少しだけ、ドキドキしてしまう。