ガチャン――

ユキさんがやっていたのと同じように、鍵を外す。

少しだけ頭を撫でて、またすぐに戻すつもりだった。


その、一瞬の隙に――


「ミャ~オ!」

「うわっ!!」


マニラは俺の体の隙間を器用に掻い潜って、地面に降り立ち――


「え!?ちょっと、マニラ!?」


玄関先で女性と立ち話をしていたユキさんの慌てた制止に振り返ることなく、その場から一目散に逃げ出してしまったのだ。


「あ、あの、ぼ、ボク、は……」

全身に感じたことのないような焦燥感と恐怖心が走り、マニラを逃がしてしまった責任から逃げるように、気付けば俺は走り去っていた。

背中に降りかかるユキさんの呼び声も聞こえなくなるくらいに一心不乱に。速く。





汗と涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった俺を迎えた両親に追及を受け、俺は彼らとともに即刻ユキさんに謝りに行くことになったが、ユキさんは自分が目を離していたのが問題だったと言って俺を責めなかった。

里親の彼女はというと、出発の時間をそれ以上遅らせるわけにもいかず、俺とマニラのことを心配しながら、そのまま出立してしまったらしい。


その日からしばらくの間、俺は家族と一緒に可能な限り、マニラの行方を探して、手あたり次第近所を捜索した。

それでもこれといった手がかりは得られぬまま、2週間くらい経った頃だろうか。



それは、突然やって来た。