「ねえ!」

車の少ない通りを慣れたように進んで行く彼の耳元に通るように、少し大きめの声を出す。


「……あ?何」

「さっきの男の子は誰なの?えっと確か、琉唯くんだっけ」

「東蘭の1年だろ」


そういうことじゃないんだけど。

私の質問の意図は通じているであろうに、教える義理はないと思っているのか、それ以上の答えが引き出せない。


「……ふーん。すごく、仲が良さそうだったね」

「別に。普通」

「普通の割りには、私を相手にする時とは全然違ってた」

「アンタは普通以下ってだけだろ」


か、可愛くない……!

素っ気なく返す彼の背中をこっそりと睨みつける。


そのまま自転車に揺られて住宅地の街並みを横目に小さな交差点を渡ろうとした、その時だった。


「――あっ!黒芭くん!ちょっと止まって!ストップ!!」

「はあ?なんでだよ」

「いいから!止まって!」


私が強制的にブレーキがかかるよう、無理やり地面に足をつけるのを見かねて、ようやく彼は速度を緩め、道の端っこに停止した。

突然の私の行動に眉を顰める彼を無視して、私はすぐさま自転車を降り、走ってきた道をUターンする。

先ほど渡った交差点の脇の小さな舗道に入り、そこにうずくまるそれに手を伸ばした。