被害状況の説明を求められているのか、ホームには別の数名の駅員の他に、通報を受けた警察官が被害者の女子高生を囲っているように見える。

事件のにおいを嗅ぎつけた周囲の利用客や野次馬たちが、興味本位に辺りを陣取っており一帯は騒然としているようで。


「だから。もういいです。アタシ、学校行きたいんでこれで失礼します。後は警察の皆さんで処理してください」

「いやいや君……。被害者なんでしょ?学校行ってる場合じゃないでしょ。被害届も出さないといけないし、ちゃんと署で話を……」

「あーもう。必要な情報は全部話したでしょ?後はそっちでやってって言ってんの」


女子高生は痴漢被害を受けたにもかかわらず冷然としていて、警察の追究を拒み車内へ戻ろうとしていた。

なんていうか……肝の据わった女の子だな……。


「すごい子だね、彼女……」

「……あー」


思わずそう声をかけたものの、隣で一緒にそれを眺めていた白亜くんの顔つきが不自然に引きつっている。

もしかして――


「知り合い、だったりする?同じ学校の生徒のようだけど……」

「んー、知り合い、っていうか」

そう言ってばつが悪そうに目を泳がせた彼と全く同じタイミングでこちらを振り向いたホームの彼女の視線が――合ってしまった。


「シロ!」

「え?シロ……?」


白亜くんの存在に気が付いた彼女の表情がぱっと明るく笑顔になる。そしてすぐに、隣でその様子を眺めていた私にも気付き、一瞬だけ怪訝そうな顔つきでこちらを見やってから、警察官の手を振り解いて同じ車両に乗り込んできた。