月曜日――


「やーん!可愛すぎる~!!そうだ!写真撮らなきゃっ!!」


祖母に制服姿を見せるためお見舞いに行ったり、これから必要なものを買い揃えたり。

あれやこれやと片付けている間に週末は怒涛の勢いで過ぎ去って行き、2年生初日の朝を迎えた。


ゆっくり朝食を食べることも儘ならない状態の私を余所に、落ち着きを払った面持ちでお行儀良くお味噌汁をすする淡色の彼と、スマホを片手にトーストに嚙り付く濃色な彼の、両極端な双子が視界の端に見切れている。


「食事中は食事に集中しなさい。マナー違反だぞ、クロ」

「……もう食った。ごちそーさん」


見かねた聖さんが注意するも特に気にする様子もなく黒芭くんは席を立ち、その拍子に床を擦った椅子の不快音が部屋に響く。

それに意識をとられる余裕もないくらいに、その日の私はほとほと困り果てていた。


「凛々子。お前もいい加減にしなさい。菜礼ちゃんが食べづらいだろう?箸が止まってしまっている」

「だってだって~。夢にまで見た女の子の制服姿!なんですもの!!」

「あはは……」


凛々子さんはどこからか持ち出してきた無駄に質の良さそうな一眼レフカメラを手に、先ほどからずっと私の食事姿をレンズに収め続けている。

聖さんの言う通り……とてつもなく食べづらい。


「り、凛々子さん……。写真なら昨日も随分と……」

「それはそれよぉ!だって今日はなーちゃんの記念すべき初登校日なんですもの!今日の制服姿は今日しか撮れないの!私ね、生前に江莉とよく話してたのよ~!将来、女の子を産んだら絶対にこうして制服姿の娘をたくさん写真に撮って……」

「あーはいはい、母さん。わかったから。それより僕たちもう出なきゃ。そんな大切な親友の娘さんを初日早々遅刻させるわけにはいかないでしょ?」


興奮冷めやらぬ姿の母親を前にして、いつの間にか食事を終えたらしい隣の白亜くんが間に割って入る。

ギャーギャーと騒いでいる凛々子さんを宥めつつ、視線だけを私に落として悪戯ぽく彼が笑った。


「もう母さんのことはいいから早く食べちゃって。あと10分で出ないとほんとに遅刻しちゃうかもよ?」

「ええっ!?そういうことは早く言ってよ、白亜くんっ!」

ここにもし祖母がいたら、時間くらい自分で確認しなさい!ときっと怒られていたであろうが。

自分の至らなさを堂々と棚に上げ、脅迫まがいな警告をしてきた白亜くんを責めるような気持ちで残った白米を胃袋にかき込み席を立つ。爆速で食器を洗い、一目散に洗面所へ急いだ。

我ながら最短記録ではなかろうかという速度で準備を終え、「初登校前の一枚~!」なんて手を伸ばして叫んでいる凛々子さんを適当にあしらってから、若干逃げるように家を出たのだった。