結局、そんな覚束ない精神状態で聖さんや凛々子さんに制服姿を披露する気にもなれず。

チェックを終えた私は元の恰好に着替えてから、部屋のハンガーラックに脱いだ制服を掛け直す。


白亜くんの冗談もちょっとたちが悪かったけど、黒芭くんの敵対心むき出しなトゲトゲオーラもあんまり喜ばしいことじゃない。(それどころか嘆かわしい)

聖さんと凛々子さん夫妻は優しくて明るくてすごく良心的な二人だけど、息子たちの種類の違うクセが……やや心配になってくる。

まあ白亜くんに関しては、さっきの一件はともかく、それ以外は大体まともだったし。

もしかしたら、これから新たに高校生活を送ることになる私に向けて、遠回しに危機感を促してくれた彼なりのエールだったのかもしれない、し……。
……いや、回りくどいな!(しかもはた迷惑!)

なんて心の中でひとりノリツッコミをして、どうにか冷静さを取り戻す。


今日は金曜日。

明日と明後日の週末を越えれば、月曜日からいよいよ私は高校2年生として東蘭高校に通うことになる。


なんだか今になって緊張してきちゃったかも。

これまでだって通信制とは言え、週に3日は通学していたけど、私の通っていた学校に制服は無かったし。

通信制クラスでも友達がいなかったわけではないけど、やはり全日制ほど顔を合わせる機会が少ないこともあってか、親友と呼べるような距離の近い友人には恵まれなかった。

小学校や中学校の頃に仲の良かった友達は皆全日制の高校に進学してしまったし、言うなれば東蘭高校での学生生活が、私が憧れていた青春の1ページを刻むに相応しい場所となるわけだ。


「……頑張らなくちゃ」

ここに来る前に立ち寄った病院で交わした祖母との会話が記憶に蘇る。


――あなたの人生はあなた一人だけのもの。後悔のない選択をしなさい。あなたの幸せこそが、お祖母ちゃんの幸せだからね。