「はい」とお姉さんが箱をここなの前に突き出した。ここなは、手をつっこんだ。紙をつかんで出した。それをお姉さんに渡した。お姉さんは紙を開いた。
 「ああ、残念、外れ」
 と、お姉さん。
 「ああ」
 と、ここな。
 「残念だったなあ」
 と、田沼。
 「ああ、別にいいです。田沼先生のおごりですし」
 「そうか」
 「次はだれいく?」
 と、ここながゆうなたちにきいた。
 「俺、いいよ」と、飛鳥がいった。
 「私もいいよ」と、芽亜里がいった。
 「じゃあ、ゆうな」
 と、ここな。
 「えええええええええ。いいよ、いいよ」
 と、ゆうな。
 田沼が残念そうな顔をした。
 「みんな、いいのか」
 と、田沼が残念そうにいった。ここながそれを見て慌てふためいた。ここなはゆうなの近くにいった。
 「ここは、田沼の機嫌をよくするために、ゆうな」
 と、ここながひそひそ声でいった。ゆうなは田沼を見た。心なしか、目があった気がした。
 「わ、わかった」
 といってゆうなが店の前に出た。
 「はい」
 と、お姉さんが箱を出した。ゆうなは手をつっこんだ。紙をひいた。それをお姉さんに渡した。お姉さんがそれを受け取り、開いた。
 「ああ、残念、外れ」
 と、お姉さん。
 「ああ」
 と、田沼。残念そうな顔をしている。それをここながチラ見した。
 「が、がんばれ、あと二回、チャンスある」
 と、ここな。
 「うん」
 と、ゆうな。
 「がんばれ、ゆうな」
 と、田沼。
 「は、はい」
 と、ゆうな。(が、がんばれって、くじ引きでしょ。どう頑張るんだ?私何も持ってないしい)
 ゆうなは箱に手をつっこんだ。(ど、どうしよう)ゆうなは迷った。(どれが当たりなんだ)ゆうなは意を決して紙をとった。お姉さんに渡す。
 お姉さんが紙を開いた。
 「ん?」
 (え)ゆうなは思った。
 「残念、また外れ」
 と、お姉さん。
 「ああ」
 と、田沼。