ゆうなの担任の先生は栗色のショートヘア、切れ長の目、黒い瞳、筋の通った鼻、シャープなフェイスライン、細身だが、がっしりしている美少年だった。田沼流星といった。最初、クラスの女子はうきうきした。
 「わあ、美少年だあ」
 クラスの女子は口々に言っていた。ところが、それは打ち破られていく。女子が話していると、
 「おい、そこ、しゃべってんじゃねえ」
 と、陰険な目つきと声で注意してきた。
 「え」
 話していた女子がきょとんとした。
 「今、ホームルーム中だから静かにしろ」
 「なんかやな感じい」
 と、女子が噂した。
 「ん、なんかいったか」
 と、田沼。
 「あ、いえいえ」
 と、女子。
 「そうか」
 それからも田沼先生の女子生徒への嫌な態度は続いた。
 例えば廊下で女子がたむろしているところへ田沼が現れた。
 「おい、邪魔なとこでたむろしてんじゃねえ」
 田沼が女子をにらみつけていった。陰険な声だ。
 「す、すいません」
 と、女子。田沼は歩いて行った。
 「うわあ、いやな奴だあ」
 「あんな言い方しなくてもねえ」
 「顔だけじゃね」
 と、女子たちは噂した。田沼は振り返った。
 「ん、なんか言ったか」
 と、田沼はつっけんどんにいった。
 「あ、いえいえ」
 と、女子。
 「そうか」
 といって田沼は去った。
 女子はひそひそ噂した。
 「顔だけ」
 「そうだよねえ」
 田沼は国語を教えていた。国語の授業中も田沼は嫌なやつだった。
 最初の国語の授業でゆうなは指名された。