先生~顔だけのあいつ

 「ああ、よかたなあ。これでクラス、いや学校の全女子に平和が来るよ」
 と、ここな。
 「そうだな」
 と、飛鳥(あすか)。
 「うん」
 と、ゆうな。
 「ん、どうした?」
 と、飛鳥。
 「あ、なんか悪いねえ、私たちの平和のために犠牲にしちゃって」
 と、ここな。
 ゆうなは首を振った。
 「うううん」
 「え」
 と、みんな。
 「ねえ、田沼のやつ、いつもと違ったね」
 と、ゆうな。
 「ああ、なんか気持ち悪かったけど、これで、奴に、にらまれることはないだろう」
 と、飛鳥。
 「あんな田沼初めて見た。すっごい機嫌いい。しかもあの田沼がかわいいもの好きなんて」
 と、ゆうな。
 「気持ち悪いよねえ」
 と、芽亜里(めあり)。
 「でもさあ、なんか田沼の違う一面を見た気がするう」
 と、ゆうな。
 「ん、ゆうな、まさか」
 と、飛鳥。
 「ち、違うよ、田沼が好きになったとかじゃなくて」
 と、ゆうなは慌てていった。声が裏返った。
 「ふうん」
 と、飛鳥。飛鳥が意味深な顔で見てくる。
 「田沼は顔だけのやつだよ」
 と、芽亜里。
 「顔だけ」
 と、ここな。
 「うん」
 と、ゆうな。
 「ヤンキーだし」
 と、飛鳥。
 「あんなヤンキー」
 と、ここな。
 「うん」
 と、ゆうな。
 「みんなに嫌われてるし」
 と、ここな。
 「うん」
 と、ゆうな。
 「でもちょっとかわいいって思った」
 「ええええええええええ」
 と、みんな。
 「ゆうなのやつはあ、田沼に恋したって決定え」
 と、ここな。
 「ちょ、ちょっとここな」
 と、ゆうなが慌てふためいた。
 「ははははははは」
 と、ここなが笑った。
 ゆうなもつられて笑った。みんな笑った。