ゆうなは焦った。あと一回しかない。これで当てなきゃ、田沼の機嫌がまたもとに戻って、あの陰険野郎が帰ってくる。あんなヤンキーが帰ってくるよ。ああ、私、何ももってないんだよなあ、ゆうなは思った。というか最初にまだ持ってないやつをあてた田沼のやつはどんだけ持ってんだよ。
 まだ持ってないって、きっとかわいいやついっぱい集めてんだ。わあ、気持ちわりい。
 ゆうなは箱に手をつっこんだ。(どうしよう)ゆうなは迷った。なかなか紙をひけない。田沼が怪訝そうな顔をした。
 「ん、どうした」
 と、お姉さん。
 ゆうなは焦って紙をひいた。お姉さんにそれを渡した。(どうかお願い)ゆうなは思った。お姉さんは紙を開いた。
 「ああ」
 と、お姉さん。(ええええええええ。やっぱ外れかよおおおおおお。三回ひいてどんだけ持ってないんだよ私いいいいいい)
 「ああ、」
 と、田沼。
 「紙が汗でぬれてる」
 (えええええええええええ)とゆうな。
 「ええとお、お、キティちゃんのポーチだ」
 と、お姉さん。
 「おおおおおおお。やったなあ、ゆうな」
 と、田沼が大喜びでいった。
 「あ、は、はい」
 (やった、私やったんだ。何も持ってないのにやったんだ)
 「よかったね」
 と、ここな。
 「よかった」
 と、芽亜里。
 「よかったな」
 と、飛鳥。
 ゆうなはお姉さんにキティちゃんのポーチをもらった。
 「おおおおおおおおお。それと同じの持ってる」
 と、田沼。
 「そ、そうなんですか。これ大事にします」
 と、ゆうな。
 「ああ、そうしてくれ」
 と、田沼。
 (えええええええ。田沼とおそろいかよおおおおおおお)とゆうなは思った。ゆうなは友達にそれを見せた。
 「かわいい」
 と、ここな。
 「だろう。それ、とってもかわいいんだ。先生も明日から学校持ってこようかな」
 と、田沼。
 (ええええええええええ)とゆうな。
 ここながゆうなの耳に顔を近づけてきた。
 「私も学校持ってきますって」
 と、ここながささやいた。
 「ええええええええええ」
 ゆうなが小声でいった。
 「田沼が機嫌よけりゃあ、注意されることなくなるよ」
 と、ここな。
 「そうだな」
 と、飛鳥。
 「えええええええええええええ」
 ここながゆうなの肩をたたいた。
 「ほら」
 と、ここな。
 ゆうなは田沼を向いた。満面の笑みだった。(うわあ、なんか気持ち悪いなあ)
 「あのお、私もこれ、明日から学校持ってきます」
 と、ゆうなはいった。
 「ほんとかあ」
 と、田沼。喜んでいる。満面の笑みだ。
 「あ、はい」
 と、ゆうな。(わあ、私やっぱなんももってないよお)
 「明日から学校が楽しみだなあ」
 と、田沼。
 「あ、はい、私もです」
 と、ゆうな。(ああ、明日から学校行きたくねえ)と、ゆうなは思った。
 「じゃあ、それ、せいぜい大事にしてくれ。じゃあ、先生はいろいろ屋台とか見るから、君らも祭りを楽しんでくれ」
 と、田沼。
 「は、はい」
 と、ゆうなをはじめ、みんな口をそろえていった。
 「あ、ゆうな、ありがとう」
 と、田沼がゆうなをみやった。
 「え、ああ、私の方こそありがとうございます」
 田沼は満面の笑みだ。
 「じゃ」
 といって田沼は去った。