「いったいあの男は何がしたいんだ。――セドリック、お前はどう思う?」

 アレクシスは、自分の斜め後ろを歩くセドリックの意見を求める。
 けれど流石のセドリックも、これには何の考えも浮かばないようだった。

「わかりかねます。ジークフリート殿下とエリス様の間に、特に面識はないはずですし」
「となると、またあいつの悪い癖か?」
「ああ、例の……」
「あの男は"他人の欲望を知りたがる"癖がある。その上、悪気なくそれを叶えてやろうとするからな。エリスから俺の情報を聞き出すなんてことは、流石にしないだろうが……厄介だな」


 アレクシスの知る限り、ジークフリートという人間は基本的には善人だ。

 性格は軽いところがあるが、人を思いやる心があるし、他人に悪意をぶつけたり、見下すといったこともない。王族にありがちな傲慢さも持っていない。

 だが一つだけ、どうにも困ったところがあった。

 それは、"他人の願いや欲望を知りたがるところ"。そしてそれが彼自身の理にかなっていると思えば、多少強引な手を使ってでも実際に叶えてしまうところだった。